2012年の振り返りと今年一番の本:『イノベーション・オブ・ライフ』
1:振り返り
2012年はこれまでの人生で一番動きのある年だった。デザイン思考に関連する活動も含め、時に悩んだり怒ったりしながら、それ以上に楽しく充実した生活ができた。
デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド |
「今年も色々あったな」と思う。
で、なんとなくアマゾンの購買履歴や本棚の様子を眺めていたんだけど、今年読んだ本は300冊前後ほど。基本的にイノベーション関係とデザイン思考ばかり。
2:今年一番良かった本
そんな中でもっとも印象に残っていて、かつ「これ読んでなかったら人生かなり変わってた可能性が多いにある」という本が『イノベーション・オブ・ライフ』。
『イノベーション・オブ・ライフ』 |
・・・という概要を聞いた時に「なんか微妙な本だろうなー」と思った。クリステンセンのイノベーション関連本は必読書だけど、今回の本はちょっと専門外のような印象を受けた。
3:キャリア本?
というのも、最初に目に飛び込んできたのは目次にあった「第一部:幸せなキャリアを歩む」という項目。「専門外の人が、ちょっと手を広げてキャリア本でも書いたのか」と思った。そういう本は駄作になる危険性が高い。ある分野では客観的に理論を語れる人なのに、自分のことになると主観的になって「精神論」になる場合がある。
が。この本は完全に違った。期待していなかったのを申し訳なく思うくらいに、得るものがあった。
4:人生≠キャリア
第二部はこんな言葉から始まる。「人生は、キャリアがすべてではない。(中略)達成動機の高い人たちは、仕事でこうなりたいと思う自分になることに没頭して、家庭でなりたい自分になることをおろそかにしがちだ」(p.86)
ここで少しドキッとする。
そしてこう続く。
「スケジュールが厳しくて一緒に過ごす暇がないことを、一番身近な人たちはわかってくれると考える。(中略)友人や家族からの電子メールや電話に返事をし忘れる。昔は大切にしていた誕生日や記念日を祝わなくなる」(p.99)
誕生日にメッセージすら寄せなくなった自分をふと思い出した。
これはまずい。
さらに次の文章。
「陥りがちな間違いは、人生への投資の順序を好きに変えられると思いこむことだ。たとえばこんなふうに考える。
『いまはまだ子どもたちが幼くて、子育てはそれほど大事じゃないから、仕事に専念しよう。子どもたちが少し成長して、大人と同じようなことに関心をもつようになれば、仕事のペースを落として、家庭に力を入れればいいさ』。
さてどうなるだろう? その頃にはもうゲームは詰んでいるのだ」(pp.102-3)
5:なりたい自分と現実の自分
将来の自分は、そこまで仕事中毒にはならないだろうと思った。まだ結婚はしてないけど、子どもは好きだし休日は家族でのんびりしたい。そう考えている。
だけど、周りの人は将来の自分をどう見るだろう。少しだけ考えてみた。
きっと「家庭を犠牲にして仕事をしている人」と思うはずだ。
つまり、クリステンセンが指摘した「家庭でなりたい自分」がすでにおろそかになっている。
2012年の仕事は順調で、始めたことは全てうまく程の勢いだった。
軌道に乗ってきたと思っていた。
でもそれは間違いだった。
軌道修正が必要だ。
6:誰に貢献するのか
クリステンセンの言葉にグサグサとやられている中で、最も印象的だったのが次の内容だった。自分の価値観とも当てはまって強く心に残った。「幸せを求めることは、幸せにしてあげたいと思える人、自分を犠牲にしてでも幸せにしてあげる価値があると思える人を探すことでもある」(pp.128-9)偉人で好きな人に古代ローマの哲学者セネカがいる。
彼の『生の短さについて』を読んだ時に「自分の歩みたい人生の輪郭」がなんとなく見えた。
生の短さについて |
クリステンセンの本を読んで、その時の気持がまた蘇ってきた気がする。
仕事で誰に貢献するかは常に考えていた。
そもそも、他人に価値を提供しなければ仕事ではない。
そのためには、自分が持っている時間やお金や才能をありったけ注ぎ込む。
それが貢献につながるし、相手の生活をよりよくする。
でも。
プライベートだって同じはずだ。
自分が貢献したい人に対して、自分が持っているものをありったけ提供する。
周囲にいかに貢献するかを考え実践することが、自分の人生で一番大事なこと。
でも「仕事」という側面だけでそれをやろうとしていた。
それは歩みたい人生とは違う。
7:2013年はさらなる貢献を
ということで、2013年は仕事だけじゃなくてプライベートでも貢献意識を持って行動したい。年明けからの仕事が既にたくさんきているからこそ、その経験を活かしてプライベートもより充実させたい。ちなみに、今回紹介したクリステンセンの本の原題は以下の通り。
How will you measure your life?
「何を人生の基準とするか?」
これは人によって様々だと思うけれど、この本を読んで自分なりの基準を改めて感じた。
「どれだけ質の高い貢献を周囲に提供できるか」
2013年も楽しみ。