主観的な情熱を持って冷静に分析を行う【2日目:プロファイル合成】

 アメリカ滞在2日目。翌日17日(日)からESIプログラムがスタート。


 そのための準備として、日本で行った「イノベーション実践」に関するインタビュー結果をまとめる。

■背景
 インタビューのきっかけとなった疑問は「イノベーションに関する情報はたくさんあり
、社内には情熱を持った推進者がいる。しかし、組織的にイノベーションへ取り組んでいる企業が少ない。なぜだろうか?」というもの。

 上記の疑問は、デザイン思考のワークショップ参加者と交流する中で感じたもの。

 ワークショップ参加者の中には「このままでは組織の未来が危うい」という意識から、積極的に社内でイノベーション実践のための取り組みを始めている人がいる。

 しかし「イノベーションを起こす必要性を、周囲の社員が感じていない」「トップは『イノベーションが重要』と言っているが、実際は口だけ」など、うまくいっているとは言いがたい状況がある。

 このよう現状を解決する最初の一歩として「組織で何が起こっているのか?」を把握しようと、渡航前に日本で10名弱の方にインタビューを行った。この内容をまとめるために行ったのが、今回のキャラクター作成。

ホテルのロビーでミート

■キャラクター作成を行う理由
 単にインタビューするだけでは、問題把握が曖昧になる。「よい話が聞けてよかった」という状態で留まることを避けるには、問題発見に関連があると思われる特徴をインタビュー結果から抽出してまとめる必要がある。
 
 そのための1つの方法がキャラクター作成。詳しくは『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』のp.17を参照(今読み返すと直訳過ぎたと反省。何らかの形で修正や反映が出来れば)。ここでのキャラクターは「作成」という表現が示すように空想的なもの。実際にその特徴を持った人が存在するわけではない。名前や年齢も架空で設定する。

 しかし、既にいくつかインタビューをした後で行うため「ユーザーが現状を変えたいと葛藤している状態」はちゃんと反映されている。これにより、インタビューしたうちのユーザー1人だけが持っている特徴のみに焦点を当てることなく、問題発見を行う上で有用な特徴を抽象的なレベルで把握できる。

■キャラクター作成の手順

 今回は以下の手順で行った。
  1. 各メンバーが行ったインタビュー結果を共有
  2. 問題意識に関わりがありそうな「典型的な特徴」をポスト・イットに書きだす
  3. 書きだした各特徴を見ながら「問題解決と関わりがありそうなもの」に各自が投票
  4. 投票数が多かった特徴を元に、キャラクター作成

キャラクター作成

■キャラクター作成によるメリット2つ
 キャラクター作成によって得られるメリットは主に2つある。

 1つが次の問題定義(Define)で必要となる「問題発生の要因」を明らかにする助けになるということ。「ユーザーが抱える真の問題は何か?」を把握してなければ、問題解決は運頼みのギャンブルになる。求められるのは「問題の徹底的な分析」と言える。ユーザー自身が気づいていない感情的な側面にも振れることで、表面的でない本質的な問題分析ができるようになる。

 もう1つのメリットは「このユーザーのために問題を解決したい!」という情熱が得られること。今回のキャラクター作成においては、むしろこちらのメリットの方が重要かもしれない。どんなに客観的に真の問題を把握できたとしても「ユーザーに貢献したい気持ち」がなければイノベーションは起こせない。そういえば、昨日ミートしたIDEOの人達も「いかにパッションが重要か」を話していた。
 
 問題解決をしたいと思う根源的な情熱の獲得と、問題解決に欠かせない客観的な状況分析。この2つを行う助けとなるのが今回のキャラクター作成。右手に情熱、左は事実(分析された状況)といったところ。