自分なりの世界観を確立するには?: 『ソクラテスの弁明/クリトン』プラトン著 学術書評vol.1

【哲学】と聞くとどんなイメージを持ちますか?
「何となくとっつきにくい・・・」そう思う人もきっといることでしょう。

哲学を僕なりの言葉で言い換えると、
【自分や他人の世界観に触れる学問】です。

たまに「あの人凄い変わっているなー」なんて人に会うことはありませんか?
その人は、その人なりの独自の世界観を持っているはずです。

哲学の面白さは、
色々な人が持っている世界観に触れながら
「じゃあ自分の世界観ってなんだろう」と考えるきっかけを得られることです。

しかし、多くの哲学書は難解なものが多く、
スタートでつまづく可能性が非常に高くなっています。

そこでおすすめしたいのが、今回紹介するソクラテスの本。

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ソクラテスの弁明・クリトン』 プラトン著、三嶋輝夫他訳、講談社、1998年。



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ソクラテスの弁明・クリトン (講談社学術文庫)
ソクラテス古代ギリシアを代表する哲学者。
ソクラテス本人は一切著作を残していませんが、弟子のプラトンソクラテスの言葉を書き残しています。

色々な出版社が『ソクラテスの弁明』を出版していますが、今回紹介しているのは講談社から1998年に出版されたものです。基本的にどれも内容は同じですが、翻訳表現に多少の違いがあります。

なお、岩波文庫から1927年に出版された同名著書は、これまで159万部も売れたのだとか。岩波文庫史上で最も売れた文庫本となっています。(ちなみに2位は夏目漱石の「坊っちゃん」です。)

※参考 『ソクラテスの弁明/クリトン』 岩波文庫


収録作品は『ソクラテスの弁明』と『クリトン』。
有名なのは『ソクラテスの弁明』かもしれませんが、個人的におすすめしたいのは『クリトン』です。


<クリトンあらすじ>
時代は今から2400年以上前の古代ギリシア
無実の罪で死刑判決を受け、牢屋に入れられているソクラテスがいました。

そんなソクラテスの元へ、友人であるクリトンがやってきます。
クリトンは、ソクラテスの脱獄を手助けするためにやってきました。

しかし、ソクラテスは脱獄に乗り気ではありません。
それどころか、『脱獄するべきではない理由』をクリトンに伝え始めます。

ソクラテスの考えはこうです。

「脱獄は不正である。

仮に自分が無実の罪で処刑されるという不正な行為を受けるとしても、
それに対して不正(脱獄)で仕返しを行ってはいけない。

不正がいけないのは、
それが不正を行う人自身の害悪になるからだ。」

これを読んで、
『うーん、その考えはちょっと理解出来ないなー』

そう思った人がいるかもしれません。
ソクラテス自身も、自分の考えに賛同してくれる人は少ないだろうといっています。

しかし、ソクラテスは『賛同者が多いかどうか』という観点で
自分の生き方を決めることはしませんでした。

例え自分の命を犠牲にすることになっても、
自分にとって大事なことを守ろうとしたのです。

ソクラテスの考えを実践することは難しいかもしれません。
人間は弱い生き物だからです。

でも、自分の命をかけてまで守り通したものがあるソクラテスから、
私たちは生きる知恵を学ぶことができるのではないでしょうか。

明け方の牢屋で交わされたソクラテスとその友人クリトンの会話。
そこから感じ取れるのは、哲学者を代表するソクラテスの生き方、考え方です。

40ページ程度の分量で、平易な言葉で語られている作品『クリトン』。

「ゆくゆくは自分なりの世界観を確立したい」
「哲学に興味があるけど、何から読めばいいのかわからない」

そんな人におすすめの一冊です。


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『ぼくという人間(ソクラテス)は、
ぼくの中にある他の何ものにも従わず、
ただぼくが論理的に考えていちばんよいと思われた言論にのみ従う』(p.131)

『有益なのは思慮のある人の意見であり、
役に立たないのは無思慮な人の意見ではないか』(p.133)

『考慮しなければならないのは、
大衆が自分たちのことをどのように言うことになるかではなく、
正義しい(ただしい)こと不正なことについて知っているただ一人の人がどう言うか、
すなわち真理そのものが何と言うかなのだ』(p.137)

『いちばん大事にしなければならないのは
生きることではなくて、よく生きることだ』(p.137)

『不正を行うことは、すべての場合において、
不正を行う者にとって害悪であり恥辱である』(p.141)

『仕返しに不正をしてはならないと同時に、ひとに害悪を加えることも、
それがいかなる人に対してであれ、またその人から何をされたのであっても、
してはならないことになる』(p.142)

『このような考えを持っているのはある少数の人たちだけであり、
またこれからも少数だろうということを、ぼくは知っている』(p.142)

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ソクラテスの弁明・クリトン』 プラトン著、三嶋輝夫他訳、講談社、1998年。



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◆目次◆

ソクラテスの弁明
 全訳
 訳注
 解題

クリトン
 全訳
 訳注
 解題

ソクラテスの弁明・クリトン (講談社学術文庫)