効果的なストレス解消法を考えよう:『ストレスとこころの健康』島悟編著 学術書評vol.7

――――――――――――――――――――――――――――――

『ストレスとこころの健康』 島悟編著、ナカニシヤ出版、1997年。


Amazon.co.jpで購入する

楽天ブックスで購入する

――――――――――――――――――――――――――――――


ストレスとこころの健康
私たちが暮らしている社会には様々な特徴があります。
その中で、誰もが納得できる特徴は「ストレス社会」ではないでしょうか。

きっと、多くの人が独自のストレス解消方法を持っていると思います。

ただ、うまく解消できる場合とそうでない場合もあるのではないでしょうか。
うまくいかない場合は、こんなことを考えると有益です。

「そもそもストレスってなんだろう?」

そう、ストレスが一体何者かを詳しく知らなければ、
効果的な対策は立てられません。

今回紹介する本は、ストレスと心身の健康の関係性について書かれた本です。
目次を見るとわかりますが色々な角度からストレスに対して解説しています。

たとえば、ストレスに対する個人差・男女差、ストレスに弱い性格、代表的な心理学の理論などなど。
当然、学術書のため「ストレス発生の原因一覧と、その原因によるストレス度の点数づけ」といったデータもついています。

もちろん、理論的な知識が増えたからと言って、すぐにストレスが減るわけではありません。
でも、『相手を知ることが、まずは攻略の第一歩』です。

自分のストレス解消法が適切なのかどうかを今一度確認したい方はもちろん、
心理学の観点からストレスの概要を学びたい方にもおすすめです。


――――――――――――――――――――
▼ 学問の扉を開くチェックポイント ▼
――――――――――――――――――――

『ストレスは、物体に外力が加えられた時に生じる歪みについて、
工学系で使用されてきた言葉です。
日常会話では、「最近いろいろストレスが多くて疲れている」とか、
「ストレスが胃にきて、食欲がない」というように使われます。
前者はストレスの原因をさし、後者はストレスの結果をさしています。』(p.9)

『ここでは、ストレスの原因をストレッサー、ストレスの結果をストレス反応とよぶことにします』(pp.9-10)

『ストレッサーには善玉と悪玉があります。(中略)
試合に備えて懸命に練習するのはストレスですが、試合に勝てば、
あるいは勝てなくても自分なりにいい試合ができれば、爽快感を味わうことができます。
こうしたストレッサーは善玉といえます』(p.10)

◆ストレッサーは大きく分けて2種類(pp16-23)

1:非日常的ストレッサー・・・自然災害、戦争、犯罪
2:日常的ストレッサー
 1)物理環境的ストレッサー・・・温度、湿度、騒音、臭い、照度など
 2)心理社会的ストレッサー・・・社会、家庭、職場生活

◆例:職場生活のストレッサー

『望ましいストレッサーとしては、
「上司・上役が変わったこと」「仕事で計画段階から参加したこと」などがあげられており、
望ましくないストレッサーとしては、
「仕事の納期に追われる」「仕事量の増加」などがあげられています。

ここで注意を要するのは「職務上の大きな変化」は、
中立的ストレッサーになっていることです。
つまり、職務上の変化は、人によって望ましい場合もあれば、
望ましくない場合もあるということになります』(p.22)


『あるストレッサーが、次のストレッサーを引き起こすというか形で、
ストレッサーが連鎖していくことはよく見られます。
したがって、1つのストレッサーにだけ注意していると、
連鎖したり、派生して生じてくるストレッサーに気づかないことになります』(p.23)
 
 
◆ストレッサーに対する反応(pp.26-30)

1:自律神経系の反応・・・交感神経系、副交感神経系
2:内分泌系の反応・・・特に重要なのが副腎皮質ホルモン
3:免疫系の反応・・・異物に対して、異物を除去する物質を生産

『ストレスに対して、食べたり飲んだりして、ストレスを発散するより、
運動して、スポーツをする方が、理にかなっているわけです』(p.27)


◆ストレスとの付き合い方:ストレス対処行動(pp.57-62)

『ストレス対処行動とはストレスから身を守るために、
私たちが自然に身につけている方法です。
「行動」という言葉を使ってはいますが、「何もしないで待つ」というのも、
1つの対処行動のあり方ですし、「楽観的に考える」というのも、
立派な対処行動です』(p.57)

『ストレス発散行動には2種類あります。
1つは自他ともに望ましい陽性ストレス発散行動、
他方は、望ましくない陰性ストレス発散行動です』(p.60)

1:陽性ストレス発散行動・・・スポーツ、趣味活動、リラクゼーション
2:陰性ストレス発散行動・・・周囲の人にあたる、愚痴、飲酒

――――――――――――――――――――――――――――――

『ストレスとこころの健康』 島編著、ナカニシヤ出版、1997年。


Amazon.co.jpで購入する

楽天ブックスで購入する

――――――――――――――――――――――――――――――



◆目次◆
はじめに
第1章 ストレスとは何でしょうか?
第2章 ストレスの原因には、どんなものがあるでしょうか?
第3章 ストレスに対する反応には、どのようなものがあるでしょうか?
第4章 ストレスに対する反応には、どうして個人差があるのでしょうか?
第5章 ストレスにおいて、男性と女性の差はどうして生まれるのでしょうか?
第6章 ライフサイクルを考える
第7章 ストレスに弱い性格とはどのようなものでしょうか?
第8章 ストレスとの上手なつき合いとは、どのようなものでしょうか?
第9章 社会的支援とはどういうことでしょうか?
第10章 こころの理解―脳の構造と働きを考える―
第11章 こころの理解―フロイトの理論(ヒステリー論)―
第12章 こころの理解―ユングの理論―
第13章 こころの理解―行動科学の世界―
第14章 こころの理解―心理テストの世界―
第15章 こころの理解―発達心理学の世界―
第16章 こころの理解―高齢者のこころの世界―
第17章 こころの不健康―神経症
第18章 こころの不健康―うつ病
第19章 こころの不健康―統合失調症
第20章 こころの不健康―嗜癖(しへき)―
第21章 こころの不健康―摂食障害
第22章 こころの不健康―心身症
第23章 こころの不健康―性格的な問題―
第24章 こころの不健康―認知症
第25章 こころの不健康への対応―カウンセリング―
第26章 こころの不健康への対応―薬物療法

ストレスとこころの健康