神様だって夫婦喧嘩する:『現代語訳 古事記』 福永武彦訳 学術書評vol.11
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今日の一冊は、誰もが名前を一度は耳にしたであろう『古事記』。
しかし、知名度とは裏腹に実際に読んだ人は少ないはず。
僕が古事記(現代語訳)を読んだのは21歳の時でしたが、
それ以前は「大昔の話はきっと意味不明だ」と考え、読もうとしませんでした。
しかし、ある日偶然本屋でみかけたのでパラパラと立ち読み。
すると、どれも容易に理解できる話ばかり。
例えばこんな具合です。
・男性神(イザナギ)と女性神(イザナミ)がセックスして子供(今の日本)が生まれた
・しかし最初の子供二人は出来損ないだった
・ある日、イザナギとイザナミが夫婦喧嘩をした
・夫婦喧嘩が原因で、毎日の生まれる人間と死ぬ人間の数が決まった
特徴としては、神が非常に人間的だということ。
これがキリスト教の神なら話は別です。
ミスなど絶対しない、人間を超越した存在として描かれるはず。
他にも、「あなたの子どもができたの」「いや、俺の子供じゃない」
と認知を迫る女性神、否定する男性神など。
情けない神の姿を見ながら、
「夫婦の仲が良ければ国は平和になるのかなー」と呑気に思いました。
他にも、ヤマタノオロチ退治で有名なスサノヲノ命が登場したり、
稻羽之素菟(イナバのしろうさぎ)などが出てきます。
昔聞いた話や懐かしい話、神様なのに身近に思える話が一杯つまっています。
のんびりした休日が、よりリラックスしたものになる一冊です。
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▼ 学問の扉を開くチェックポイント ▼
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『神々が国を生み、島を生み、また神を生み、人を生んだ』(p.18)
◆伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)
『イザナギノ命は妻のイザナミノ命に次のように尋ねた。
「お前の身体は、どのようにできているのか?」
「私の身体は、これでよいと思うほどにできていますが、
ただ一ところだけ欠けて充分でないところがございます。」
こう女神は答えた。
イザナギノ命がそれを聞いて言うには、
「私の身体も、これでよいと思うほどにできているが、
ただ一ところ余分と思われるところがある。
そこでどうだろう、私の身体の余分と思われるところを、
お前の身体の欠けているところにさし入れて、
国を生もうと思うのだが。」
「それは、よろしゅうございましょう。」
こうイザナミノ命も同意した。』(pp.29-30)
『イザナミは(中略)これ限り契(ちぎり)を解くことを妻に申しわたした。
この言葉を聞いたイザナミノ命が言うには、
「いとしい我が背の君よ、もしあなたがそのようなひどいことをなされるならば、
あなたの国の人々を一日に千人ずつ絞(くび)り殺してあげましょう。」
これに対して、イザナギノ命は答えて言った。
「いとしい我が妻よ。お前がそんなに非道なことをするならば、
私のほうは一日に千五百の産屋(うぶや)を建てて、
子供を生ませることにしよう。」
こういう誓いがあったために、
一日に必ず千人の人が死に、
その代わりに一日に必ず千五百人の人が生まれるわけなのだ。』(pp.48-49)
◆八俣の大蛇(ヤマタのオロチ)VS須佐之男命(スサノヲノミコト)
『かの八俣の大蛇(ヤマタのオロチ)が真赤な酸漿(ほおずき)のような眼を光らせ、
苔蒸したその胴体をくねらせて、凄まじい勢いで垣根の向こうに現れ出た。
しかし門ごとに、芳醇な酒の香をただよわせている
酒槽(さかぶね)があるのを見ると、
八つの頭を八つの酒槽の中にひたして、中の酒を飲みほした。
しかしこの酒は絞りに絞り、醸しに醸した強い酒だったので、
さすがの大蛇もすっかり酔(よい)がまわって、
頭の一つ一つが次々と地面に横になり、
ついには八つの頭がすべて倒れて寝こんでしまった。
この時機を待っていたスサノヲノ命は、その腰に帯びた、
長さ十握(とつかみ)もある剣をすらりと引き抜くと、
八つの頭を八つながら、次から次へと切り放した。』(p.75)
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◆目次◆
古事記 序
古事記 上巻(宇宙の初め、神世七代、伊邪那岐命と伊邪那美命ほか)
古事記 中巻(〔神武〕―東への道、〔神武〕―征旅の歌、〔神武〕―七乙女ほか)
古事記 下巻(〔仁徳〕―系図、〔仁徳〕―嫉み深い大后と黒姫、〔仁徳〕―嫉み深い大后と八田若郎女ほか)